先日、Plugin Allianceにてセール対象となっていたギター音源、WEDGE FORCE Matchaを29.99ドルで購入しました。
セールを利用することによって、数あるギター音源の中でもかなり安く手に入れることのできる音源になると思います。
以前より何度かセールで見かけているので、タイミングさえ測れば誰でも似た価格で購入することが出来そうです。
普段僕はギターは基本的に自分で弾いて録るのですが、制作のスケッチ段階だといちいちギター録るのがちょっとめんどくさいなと感じていて、そこそこ使えそうなギター音源を探していました。
この音源を使用してみて僕が感じた印象は、「色々と思う所はあるけれど、この音源が得意な範囲では使えそうな感じ。」といったところです。
後ほど記述しますが、割とイラッとするバグもあったりして、今後のアップデートの有無によっても評価は変わりそうです。
この記事では、そんなWEDGE FORCE Matchaの使い方と実際の出音を中心にレビューをしていきたいと思います。
前半の項目ではWEDGE FORCE Matchaの使い方、後半で出音を取り上げていきます。
使い方の項目が結構長くなっているので「説明はいらないから早く音だけを聴きたい」という方は、目次から後半の「WEDGE FORCE Matchaの音色」の項目まで飛んでください。
WEDGE FORCE Matchaの使い方
まずは使い方の解説から行きましょう。
各項目ごとに画像を色分けしましたので、順を追って解説します。
LIVE AUDITION/PRESET
画像の青枠部分です。
LIVE AUDITIONのボタンを押すと、デモ演奏が再生されます。
別に立ち上げたアンプシミュレーターで音作りをする際、このボタンを押して適当なフレーズを流しながら音作りをすると、作業がはかどります。
そして右の項目、<CUSTOM PRESET>となっているタブから、プリセットを呼び出すことが出来ます。
プリセットは全部で12種類あります。
PITCH BEND/MOD WHEEL
画像の赤枠部分になります。
PITCH BEND部分の縦のスライダーで、ホイールでのピッチベンドで最大どこまで上下させるかを決める事ができます。
最大値は1オクターブ、「12」までです。
チョーキングの表現はピッチベンドでおこなうことになるので、しっくり来る値を選びましょう。
僕は全音分の「2」くらいが使いやすい設定かなと思います。
一見、使い道が難しそうなMAXの「12」は、使いこなせばワーミー的な表現ができそうでもあります。
そして右側、MOD WHEELではハーモニクスの量を調整します。
MAXの状態はなかなか金属的な音になるので、不快であれば上限を80ぐらいにするとか、そういった使い方ができます。
NECK FRETTING POSSITIONS
次は画像の黃枠部分です。
各弦のどのあたりのポジションで演奏するのかを調整する項目です。
6弦8フレットのCと、5弦3フレットのCじゃ同じ音程でも音の質感違うよね的なやつです。
残念なのは、指定できるブロックが4フレット幅と狭めです。
なので、広い音域を駆け上がるようなフレーズでは、低いところに各弦のポジションを設定していると、高音域はひたすら1弦1本で頑張って演奏しているようになったりしてしまいます。
LAST NOTES
画像の緑枠部分です。少しややこしい項目です。
ピッチベンド、モジュレーションともに1~4、そして無限と5つの数値から選択します。
複数の音が重なるように演奏した時、最後に鳴らした音から設定した数値分の音にだけ、それぞれの効果がかかります。
例えば、ピッチベンドの数値を「2」、LAST NOTESを「1」に設定したとします。
アルペジオのように各音が重なるようド、ミ、ソと弾き、ピッチベンドを行った場合、
最後に演奏した1音の「ソ」が「ラ」へ変化します。
先に鳴らした「ド」と「ミ」は音程変化をしません。
LAST NOTESを「2」にして同様の演奏を行うと、後ろから数えて2音、「ミ」が「ファ#」、「ソ」が「ラ」へと2音変化します。
この場合は「ド」の音だけ音程変化をしません。
この項目の有効的な使い方は、パッと思いつく範囲で2つあります。
1つ目がLAST NOTESを「1」にしてユニゾンチョーキングを表現する方法です。
例えば「レ」に対し「ド」をほんの少しだけ遅らせて発音させ、ホイールで「ド」を持ち上げ「レ」まで持っていくことで、ユニゾンチョーキングを表現することが出来ます。
1音半のユニゾンチョーキングの場合は、赤枠部分のピッチベンドを「3」にしておくことで可能です。
2つ目は、数値を無限に設定しておいて、アーミングのようにコード全体のピッチを揺らす使い方です。
細かい範囲で揺らしたい場合は、ピッチを最も低い「1」にしておくと調整しやすいかもしれません。
PICKNG/BEND TYPE/POLYPHONY/SUSTAIN PEDAL
紫枠部分です。項目は多いですがここはサクサク行きます。
PICKINGの項目よりピッキングスタイルをオート、ダウン、アップ、オルタネイトと選択できます。
通常はオートで問題ないと思いますが、男気あふれるフルダウンピッキングを表現したければダウンに設定すればOKです。
BEND TYPEではピッチホイールでの操作をベンドかスライドかを選択できます。
どっちかしか出来ないのかよと思いますが、CCで切替可能なので面倒ですが共存は可能です。
PORYOHONYでは同時発声数を選択します。
単音なら「1」6弦全部なら「6」といった具合です。
ここは演奏スタイルによって選択すれば良いと思います。
次にSUSTAIN PEDALの項目です。
ここではHOLD、MUTE、PUNCH MUTEの3つの項目があります。
まずHOLDはサスティンペダルをピアノ的に使う項目です。
HOLDを選んだ状態では、ペダルを踏んだ状態で鍵盤から指を離しても音が鳴り続けます。
次にMUTEを選択した状態では、ペダルを踏み込んだ状態で演奏した音がブリッジミュートした音色になります。
その次のPUNCH MUTEを選択した状態も同様に、踏み込んだ状態でミュートになります。
この2つの違いは、MUTEは踏んでから発生した音に対してミュートが掛かるので、音が鳴っている途中で踏み込んでも元の音は変化なく鳴り続けます。
対してPUNCH MUTEでは、音を鳴らした状態でペダルを踏むとミュートして音が切れます。
このような、音が鳴っている時にペダルを踏み込んだ際の動作がMUTEとPUNCH MUTEの違いになります。
紫枠内上部の[03]PROGRESSIVEとなっているタブは次の項目のVEROCITY MAPのプリセット欄です。
VELOCITY MAP/ATTACK/DETUNE/MIDI/HIGH PERFORMANCE MODE
オレンジ色枠内の項目です。解説も終盤ですので、もう少しだけ頑張りましょう。
VELOCITY MAPにて、入力されたベロシティに対しての発声の強さを調整します。
極端な話、全部MAXにしてしまえば入力されたベロシティに関わらず同レベルの音が出ます。
ギターでの右手の強弱をしっかり表現したい場合は、この項目をじっくり詰めてみると良いと思います。
次にATTACKです。brightからdynamicまで横スライダーがあります。
正直、強く演奏した時はあまり違いがわからないのですが、弱い音で演奏した際に違いが出ます。
brightによると弱い音でも固くヌケの良い音、dynamicによると弱い音では丸みのある太めの音になります。
ここは個人的な好みでチョイスすれば良いでしょう。
次にDETUNEです。
ギターはその構造上、弦を押さえる強さで微妙に音程が変化してしまいます。
DETUNEを少し設定してやることで、そんな音程のゆらぎを与えることが出来ます。
あまり高い数値に設定してしまうと、ただの音痴な演奏になるので要注意です。
次にその下、MIDIボタンを押すとウィンドウが開きます。
このウィンドウにてMIDIコントロールの割当の変更ができます。
最後にMIDIボタンの隣にあるHIGH PERFORMANCE MODEです。
これは正直、何が起こっているのかよくわかりません。
この項目だけ、なぜかマニュアルにも記載がないんですよね…。
名前から想像すると、高負荷でより高度な処理をおこなうモードなのかと推測されるので、マシンスペック的に問題ないようでしたらONにしておいても良いと思います。
以上にて使い方の項目を終わります。
お読みくださった方、お疲れさまでした。
WEDGE FORCE Matchaの音色
WEDGE FORCE Matchaの注意点
ここからはWEDGE FORCE Matchaがどんな音を出せるのかを見ていきましょう。
その前に、1つだけ触れておかなくてはいけないポイントがあります。
ゴリゴリのPRS風の見た目からは、超ハイゲインなサウンドが出せそうな雰囲気がありますが、ここにこの音源の最大の落とし穴があります。
この音源単体では、しょぼいDIの音しか出ません。
オーディオインターフェースにギターを直差しで弾いたときのようなぺらぺらな音です。
というのも、この音源は最初から「本格的な音作りは外部のエフェクトを使ってやってくれ」という作りのものだからです。
なので、なにもアンプシミュレーターを持っていない方は、購入時に合わせて何かアンプシミュレーターも購入するか、諦めて違う音源に行くかになると思います。
High Gain
今回は、先ほどのリフに対してAmplitubeでソルダーノのモデルを選択し、音作りをしてみました。
一気に様変わりしました。
このように、音源にプラスして何かシミュレーターを挟む必要がありますが、その際の出音はなかなか使えそうな音色です。
次はベースとドラムも打ち込んでアンサンブルにしてみました。
ギターはbx_stereomakerを使って1本の音色を左右に振ってあります。
このようなハイゲインな音色で、ブリッジミュート混じりのパワーコードでのリフを演奏させる使い方が、 WEDGE FORCE Matchaの一番得意な音色を出す方法だと思います。
ちなみに今回の演奏では、全てベロシティ均一のベタ打ちでEQやコンプは使用していません。
個人的には、これは結構使えそうな音色じゃないか、と感じました。
Distortion
見た目からもゴリゴリのメタルサウンドが得意なのはわかるけど、ほかの音作りだとどうなんだ。
ということで、まずはPOPSでも出番の多いメロコア的なディストーションサウンドを作ってみました。
先ほどと同じようにシミュレーターにAmplitubeを使い、使用モデルはマーシャルJCM800です。
悪くはないのですが、歪を減らすと少しシンセ臭いというか、本物のギターの音とは違いがあるように聴こえます。
時間をかけて入念にベロシティを調整することで、これよりもう少しマシに聴こえるようには出来ると思います。
ただ今回の例のような3ピースのバンドサウンドでは、ギターが目立つので少し作り物感が出てしまいますね。
しかし、アイドルソングやアニソンであるような、上モノのシンセの数が多くてギターは脇役な曲であれば、使えないことはないんじゃないかと思います。
Clean
歪み減らしたら作り物っぽくなるなら、クリーンなんてダメダメじゃないか。
そんな風に想像してしまいますが、物は試しです。実際に聞いてみましょう。
アンプはAmplitubeのジャズコーラスを使ってアルペジオを打ち込んでみました。
うーん…。といった感じです。
そもそもがシングルコイルの音ではないので、この音源はこういったフレーズ自体が苦手そうです。
悪いとは言いませんが、自分が制作する時にクリーントーンで使用することはないと思いますね。
WEDGE FORCE Matchaの気づいた問題点
僕もめちゃくちゃ使い込んだ音源というわけではないですが、すぐに気づいた問題点が2つあります。
1つ目はブラッシングが出来ないこと。
ということは、カッティングフレーズを鳴らすのは厳しい訳で、この点からもやはりクリーンやクランチでの仕様は厳しいのかなと思ってしまいます。
パワーコードとブリッジミュートがメインの音源と捉えたほうが、割り切って使えそうな気がします。
そして2つ目。
僕の制作環境はWindows10でStudio One5を使用しているのですが、ソングファイルを保存した際、 立ち上げているWEDGE FORCE Matchaの設定が初期値に戻ってしまいます。
具体的にはNECK FRETTING POSSITIONSが全て「0」になったり、POLYPHONYが「2」に強制的に戻されます。
このバグによって、僕は現在この音源の評価をかなり下げてしまっています。
ただ、もし将来アップデートで解決されることがあれば回復する評価ですし、POLYPHONYが「2」に勝手に戻るのであれば、いっそこれはパワーコード専用音源だと前向きに捉えれば使うこともあるかなと思います。
今回のまとめ
長い記事となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
個人的には、引っかかる点がいくつかあっても、フレーズが自由に打てる分ujamのギター音源より使い勝手が良いのかなと感じます。
買おうか買わないか悩んでいる方にとって、今回の記事が判断の材料となりましたら幸いです。
それでは。