Adobeがサブスクリプションを導入してから今日に至るまで早10年以上、世の中のサブスク化の勢いというものには抗うことの出来ない大きな流れを感じます。
その流れは当然、音楽業界にも変化をもたらしています。
Spotifyに代表される聴き放題サービスはさることながら、制作側でもSpliceやLoopcloudのようなサービスが誕生し、広く受け入れられています。
そんな時代の中においてでも、突如発表された「2023年3月27日以降のWAVES全面サブスク化」というニュースはDTM界隈にとって大きなニュースだったのではないでしょうか。
好意的に受け止める方、そうでない方。どちらも存在することと思います。
事の是非は一旦置いておいて、この記事では「これを機にWAVESから他のプラグインに乗り換えを考えたい」という方へ向けて、色々と僕なりの代替案を紹介していきたいなと思います。
<3/30追記> ユーザーからの大きな反響を受け、製品の永続ライセンスとWUPの販売を4月中旬より再開するとWAVESからアナウンスがありました。
WAVESプラグインの代替案まとめ
バンドル
まずはGoldやPlatinumのような、あれこれまとめて手に入るバンドルから紹介します。
率直なところ、WAVEのようなデジタルもアナログも飛び道具もごちゃまぜのバンドルは珍しく、1つのバンドルだけで代役をまかなうことは難しいかな、といった印象です。
iZotope – Ozone(Advance)
C1やQ10のような、アナログモデリングではないエフェクトの代替案として紹介します。
OzoneをAdvanceエディションで導入すると、Ozone内のエフェクトをそれぞれ個別に立ち上げて使用できます。
これらの個別プラグインをエフェクトバンドルとしてみた時、なかなか優秀なバンドルとして見ることができます。
EQ、コンプ、イメージャー、エキサイター、マキシマイザーなどなど。Ozoneだけで一通りのエフェクトが揃います。
Vitaminの代わりを探している方も、一度Ozoneのエキサイターを試してみてもいいかと思います。
合わせてNeutronも導入できれば選択肢が増えてさらに良しですが、どちらかに絞るなら使えるマキシマイザーが手に入るOzoneの優先度が上かなと思います。
時折2つまとめてセール対象になっている時があるので、両方狙うならセール時がおすすめです。
IK Multimedia – T-Racks
アナログ系のエフェクトバンドルです。WAVESでもあったモデルも多く含まれています。
パルテックにLA2Aや1176、SSLはチャンネルストリップもバスコンプもあります。
逆に「バンドルで手に入れてもあまり使わないだろうなぁ」というプラグインも結構あります。
[Classoc T-Racks ○○]のような昔からあるエフェクトは、あえてチョイスして使う人は少ないのでは、と思います。
T-Racksのおすすめな購入方法としては、IK Multimedia恒例のグループバイの実施時に個別モジュールを購入する方法です。
IK Multimediaでは定期的に、一定期間内に多くの人数が対象商品を購入するとさらに無料で何個かもらえるキャンペーンを行っています。
キャンペーン時は「EQ1個買ったらプラグイン10個もらえた」みたいなことになるので、グループバイ時に欲しいものだけを選んで手に入れる方法が一番コスパの優れた方法だと思います。
Arturia – FX Collection
もう1つアナログ系のエフェクトのバンドルを代替案として紹介します。
アナログ機材をモデリングしたEQ、コンプ、リバーブ、ディレイ、コーラス、フィルターなどのバンドルです。
個々のエフェクトの出来は個人的にすごく好きなのですが、バンドルとしてはエフェクトの数が少しさびしい点がマイナス要素です。
EQはSSL、コンプはLA2Aといった定番が存在しないので、やはり満点とはいえないのが惜しいところです。
年に数回セールで半額になっているので、購入するならその時がおすすめです。
Soundtoys – Soundtoys 5
こちらは歪み系や空間系が多く収録されている、飛び道具系のエフェクトが豊富なバンドルとして紹介します。
歪み系プラグインのDecapitatorやRadiatorを使って、OneKnob DriverやBerzerk Distortionの代わりに。
空間系ではPanManをMondoModの代わりに使ったりといった感じです。
バンドル自体の個人的なイメージとしては、「ディレイが豊富なバンドルだなぁ」と言った感じです。
他のバンドルにはない豊富なエフェクトが魅力ですが、反面これだけでミックスするのは無理だと感じます。
なにか別のプラグイン類+Soundtoysという導入の仕方が理想じゃないかと思います。
個人的には定価の$499は高すぎると思っていて、その点から積極的にはおすすめしにくいです。
チャンネルストリップ
ここからは個別のプラグインの紹介です。
WAVESのプラグインといえば、E-ChannelやG-Channelを愛用していた方も多いのではないでしょうか。
次は、そんなチャンネルストリップの代替案を紹介します。
Brainworx – bx_console
Plugin Allianceで販売されているBrainworxのチャンネルストリップ類です。
どれもおすすめなのですが、SSLだけでE、G、Jの3種、さらにNeveにFocusriteやAMEKもあり、全部買うとなると結構な出費となります。
まずはWAVESで使っていたEチャンネルやGチャンネルの置き換えから始めてみてはいかがかなと思います。
Lindell Audio - 80Series
こちらもPlugin Allianceで販売されているチャンネルストリップで、Neveのモデリングです。
Neveのチャンネルストリップに関しては、個人的には先程のBrainworxのものよりこちらが好きです。
APIのモデリングである50 Seriesというものも販売されています。
EQ
定番どころの代わりを紹介します。
何度も同じものを紹介するのもあれなので、先に紹介したバンドルに含まれるものは省きます。
Sonnox – Claro
これはH-EQやQ10の代わりのイメージです。
帯域ごとにソロで聴けて、背景にアナライザーがあるEQとして、おすすめのEQです。
Black Rooster Audio – VEQ1P
パルテックEQのモデリングです。
後のコンプでも登場しますがBlack Rooster Audioのエフェクトは値段も使いやすさもいい感じです。
コンプレッサー
1176やLA2Aなど、WAVESのプラグインでも定番どころの多いコンプレッサー。
いくつか紹介していきます。
Purple Audio – MC77
1176系のコンプです。
76系で乗り換え先を探しているなら、候補に入れてもいいと思います。
Pulsar – 1178
こちらも1176系ですが、かなり現代的な仕様がプラスされています。
サチュレーションの種類を変えれたり、通常ハイパス、ローパスで調整するサイドチェインフィルターをEQのように調整できたりと、元の1176からはかなり進化した物になっています。
一風変わった76へ乗り換えようと思う方はぜひお試しください。
Black Rooster Audio – VLA-2A Mark II
LA2Aをモデリングしたコンプです。
実機と違いDRY/WETのツマミが加えられているなど使い勝手が良くなっています。
リミッター/マキシマイザー
WAVESのLシリーズはとても使いやすいプラグインで、お世話になった方も多いかと思います。
僕は最近はずっと先述のOzoneのマキシマイザーを使用しているのですが、それ以外でいくつかおすすめを紹介します。
Brainworx – bx_limiter True Peak
Brainworx製のリミッターです。
使いやすいですし、各ノブもシンプルにまとまっていて視認性も良いです。
セール時に$50くらいになること+セール時に時折配られる$20クーポンを使うことでかなり安く手に入れることができます。
A.O.M – Invisible Limiter G3
人気のあるInvisible Limiterの3代目です。
物はいいですが、リミッター単体だと考えるとなかなか値が張ります。
こちらはセールをしているのは見たことがありません。
リバーブ
WAVESのTrueVerbやH-Reverbの代わりに使うなら、こちらがおすすめです。
Valhalla – Vintage Verb
使いやすくプリセットも豊富でおすすめです。
負荷も軽く、トラックにインサートで使うのにも向いていると思います。
Valhallaはルームやプレートもおすすめなんですが、1つだけ買うならVintage Verbが万能かなと思います。
複数買うならRoom+Plateという組み合わせもありだと思います。
Valhallaはセールを一切行わないことを明言していて、お値段はつねに$50です。
LiquidSonics – ILLUSION
LiquidSonicsのプラグインだとSeventh Heavenのほうが人気かと思いますが、僕はこちらのILLUSIONを推したいです。
気に入っているところは、細かな音作りができるリバーブであることに加えて、プリセット自体も使える音だという点です。
じっくり作り込むときでも、サッとリバーブかけたい時でも使えて使い所の多いリバーブだと思います。
ただ、Valhallaと比較すると負荷は高めです。
ディレイ
個人的にはH-DelayはWAVESのプラグインの中で1~2を争うほど出番が多かったので、代わりを考えるのは難しかったです。
Valhalla – Delay
H-Delayに出来ることは大抵できると思います。
ただ色々出来るがゆえに少し操作が分かりにくいので、定番の設定がある方は最初にプリセットを作ってしまうのが良いと思います。
こちらも価格は固定の$50です。
ステレオイメージャー
定番プラグイン「S1」の変わりです。
iZotope – Ozone Imager
S1に負けずシンプルで使いやすい作りで、「もうこれでいいのでは」と思います。
こちらは無料プラグインなので、すぐ導入できます。
ローエンド系
SubmarineやLoAirのような低音を盛るやつです。
Brainworx – bx_subsynth
またもやBrainworxのプラグインです。
割と使いやすいプラグインであることに加えて、セール時によく$30くらいになっているのでお求めやすいという点からもbx_subsynthをおすすめします。
Unfiltered Audio – Bass-Mint
こちらもPlugin Allianceで購入できるプラグインです。
先程のbx_subsynthよりも音作りの幅が広く飛び道具的な音も作れます。
単純にローを足すだけならbx_subsynthのほうが使いやすいので、使いやすさか音作りの幅かで決めるといいと思います。
テープマシン
J37やKramer MPX Master Tapeの代わりです。
IK Multimedia – T-RackS Tape Machine Collection
4つのテープマシンのバンドルです。
「そんなに数いらないよ」という場合は1機種だけ購入することも可能です。
個人的にはTape Machine 440の感じが好きなのですが、ブラインドテストで聴き分ける自信はありません。
T-RackS TASCAM Tape Collectionというまた別のバンドルも存在するので、テープマシンを導入したい方はデモ版を試してみるのも良いんじゃないでしょうか。
アナライザー
なんだかんだPAZ Analyzerで事足りてた人も多いのではないでしょうか。
そんなアナライザーからおすすめを2つ紹介します。
iZotope – Insight2
よく登場します。iZotopeです。
いろいろ試してみた結果これが一番見やすい感じがしたので、アナライザーでPAZ Analyzer以外のものを紹介するならInsight2が一番手に上がります。
ただこれも定価がやたらと高いので、セール待ちがいいと思います。(結構な頻度で半額以下になります。)
Voxengo – SPAN
フリーのアナライザーです。
PAZ Analyzerと変わらないくらいの機能はある上、何と言っても無料なのでこちらもおすすめです。
ダブラー
WAVESのDoublerは結構使い勝手が良くて、いいプラグインだと思います。
そんなDoublerを置き換えるなら、という2種類です。
Sonnox – VoxDoubler
使いやすさ、作れる音の幅、ダブリングの自然さと、どこをとっても今のところ個人的に一番いいと思えるダブラーです。
あえてマイナス面をあげるならば、ちょっと負荷が高いことくらいです。
iZotope – Doubler
またもやiZotopeの無料のやつです。
あまり調整できる項目はありませんが、無料なのでまずはこれを試してみて、微妙だと思ったらVoxDoublerなりを考えてみる、というのもありだと思います。
代わりの利かない物
色々考えた結果、なかなか変わりの見つからない物も存在します。
- シグネチャーシリーズ
- One Knobシリーズ(効果ではなく手軽さ)
- Vocal Rider
このあたりはパッと思いつかないです。
One KnobシリーズはDOTEC-AUDIOで何とかならないかと考えたのですが、WAVESほどのバリエーションがありません。
Vocal Riderは少々使い方は異なりますが、Nectarで似たようにはなるかもしれません。
今回のまとめ
今回は、「WAVEのサブスク化に伴い、もし脱WAVESを考えるなら。」というテーマで色々とプラグインを紹介してきました。
今後ともWAVEと付き合っていくかどうかはそれぞれの考え次第ですが、この記事が一つの参考になればと思います。
また後日なにか考えつくものがあれば追記いたします。
それでは。