DTMで楽曲が作れるようになった頃に出会う定番の疑問があります。
それは、他人のプロジェクトを見たときに「俺の曲って、トラック数少なすぎ?」と感じてしまうことです。
具体的に言うと、自分の曲は10~20トラックくらいで完成しているのに、100トラックをゆうに超えるような他人の曲と出会うことで「このままでいいのかな?」と悩んでしまうことです。
実はその不安は全く気にする必要はありません。
上級者の楽曲のトラック数が多いのは、聞くと納得できる必然的な3つの理由があります。
この記事では「なぜ他人の曲はトラック数が多いのか?」という疑問に対し、トラック数が増えていく3つの理由を解説します。
なぜ他人の曲はトラック数が多いのか?3つの理由
1.各パートの強化と細分化
登場する楽器の数が同じでも、1つのパートに複数のトラックを使用して音色を作り込むことでトラック数が増加します。
トラック数を増やしてやりたいことは、各パートの強化と細分化です。
強化は今あるパートを更に良くしようとする作業で「レイヤー」や「ダブルトラック」などを駆使して、より映えるパートを作ります。
ボーカルを例に上げてみると、
- メインボーカルのみ(1トラック)
- 上下のハモリ追加(3トラック)
- ハモリをそれぞれ左右に振りたいのでダブルに(5トラック)
- サビのメインボーカルをダブリングして力強さをプラスする(6トラック)
という感じです。
そして細分化は1つのパートを更に細かくトラック分けすることで、より細かな調整が効くようになる作業です。
ドラムでいうと、
- ドラム全体でまとめて出力(1トラック)
- それぞれのキットごとにパラアウトして調整(10くらい)
- スネアの上下、キックの前後など1つのキットをさらに細分化して調整(20くらい)
みたいな感じです。
これだけで、まだギターもベースもいないのに26トラックくらいになっていますよね。
レイヤーに関してさらに言うと生ドラムのキックにサンプルのキックを重ねたり、リードギターにシンセリードを重ねたり、ピアノにベルやマリンバを重ねたりとやればやるほどトラック数は増えます。
ギターもコード弾きとアルペジオはトラックを分けたほうが音量管理しやすいですし、「アルペジオにはリバーブ多め」なんて調整もしやすくなります。
このように、それぞれのパートをより作り込むことでトラック数は自然と増えていきます。
2.アレンジの多彩さ
アイドルソングやアニソンなどで顕著ですが、一曲を通して飽きさせないように多彩なアレンジがされています。
展開に合わせて様々な楽器を出し入れすることで、結果的にトラック数が増えていきます。
たとえばラジオボイスのボーカルで始まるだとか、2番のAメロはチップチューンぽくするとか、Cメロのバックではリバーブたっぷりのピアノが登場するとか、アレンジを施せば施すほどトラック数が増えます。
ここから言えることは、100トラックある楽曲でも同時に100トラック鳴っている訳ではないということです。
イントロにしか出てこないトラックもあれば、ラスサビにしか出てこないトラックもあります。
一曲を多くの展開で彩った結果、展開ごとに必要なトラックが積み重なり、気づけばトラック数がすごく増えているという感じです。
そして多種多様のアレンジの結果、全く同じパートのトラックを分けることもあります。
詳しく言うと、1番と2番のサビでギターは全く同じフレーズだけど、2番のみストリングスが追加で入ってくるのでギターの音量を少し下げたい。というような場合にギターのトラックを1番と2番で分けることがあります。
ギタートラックのフェーダーにオートメーションを書けば済むことなのですが、オートメーションを書くよりも各トラックのフェーダーで操作したほうがやりやすいですし視認性もいいです。
ここは人それぞれではありますが、このような行動からもトラック数は増加します。
3.多種多様なFX
楽曲ジャンルにもよりますが、多くのFXを使用することでもトラック数は増えます。
サビ前の盛り上げるためのライザーや、インパクトを出したいときの爆発音なんかは定番ですが、時計の音や雨音、声ネタやグリッチ音などその内訳は様々です。
これらは曲中にたった1回しか出てこないものであっても、使用する種類の数だけトラックは増えていきます。
やみくもに大量のFXを使えばいいというものでは無いですが、効果的に使用されたFXが耳に残る楽曲も多くあります。
楽曲を彩るFXを散りばめていった結果、トラック数はさらに増えていくことになります。
今回のまとめ
今回は何故トラック数はどんどん増えていくのか、というお話でした。
1つだけ言っておきたいのは「トラック数が少ない=しょぼい」という訳ではないということです。
やりたいことをやったら結果的に増えていた。というものであって「目標の100トラックまであと30足りないから、何とかして音を増やさないと」といったものではありません。
トラック数が増えるほどミックスも大変になりますし、自分の楽曲の物足りなさを感じる部分を少しずつ改善する形でゆっくりチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
それでは。